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:: 出会い ::


クリフ・フィッター。
紋章術研究の権威。フィッター博士の義理の息子で、
クラウストロ人の血を引く。

マリアが調べたデータ、映像を見ているうちに
何故かこの男が気になる自分がいるのに気づく。

(会って話をしてみたい…。)

そんな思いがマリアに通じたのかどうなのか、
ある目的のためにクリフを迎えに行く役目が自分に与えられた。



マリアに頼まれてからすぐにハイダへと向かったフェイトだったが、
迎えに行く宇宙船の中でハイダが襲撃され、フィッター博士が誘拐…
そして、クリフはというと行方不明だという情報が入った。
幸いミラージュさんの助けでクリフの居場所を早くに発見することが出来た。
ヴァンガード3号星。そこにクリフが不時着したという。

(もうすぐ行くから…無事でいてくれ、クリフ。)

会ったこともない男の無事を必死に祈るフェイト。
こんなに必死になるのは初めてかもしれない…。



ヴァンガード3号星に辿り付き、クオッドスキャナーからの救難信号を
頼りにクリフのいる場所へと向かうと、寂れてしまった遺跡に辿り付いた。
モンスターを倒しながら遺跡へと入り、キョロキョロと辺りを見渡していると、
どかっ!と何かがぶつかる音と共に悲鳴が部屋の向こうから聞こえてきた。

「クリフ!?」

もう奴らに見つかってしまったのか!?

とっさに剣を抜き、音がしたフロアへ踊り出る。
そこには銃を撃たれながらも華麗に蹴りを決める男の姿があった。
クラウストロ人であるミラージュさんと一緒に仕事をすることも多いため
その星の人が戦闘に長けているとは知っていたが、
ここまでの能力を見たことはなかった。
余りの戦闘センスに自分の目的も忘れ、その姿に見惚れてしまう。

と、そんなフェイトの視線に気づいたのか…
闘っている男にとどめの蹴りを入れ、クリフがこちらへと振り向く。

「ん?何だぁ?お前もこの男の仲間か何かか?」

不機嫌そうにしながらも、さっきまでの戦闘による疲れなど
全く感じさせない声である。
不審気な視線で見つめられ、一瞬言葉に詰まるが、
その視線を跳ね返すかのようにまっすぐと見つめ言葉を返す。

「いや、僕はこいつの仲間じゃない。」

「それじゃ、あのバンデーンの奴らの仲間…じゃねぇな。」

見るからにヒューマンタイプであり、バンデーン兵とは違う自分の姿を見て、
今まで襲ってきたどの奴らの仲間ではないことを理解したらしい。
しかし、警戒の姿勢を解く気配はない。
この短期間でクリフの周りで起こったことを考えれば無理もないであろう。
出来るだけ慎重に自分がクリフの敵ではないという
思いを込めて話を切り出す。

「クリフの言う通り、バンデーンでもないよ。
僕はうちの…クウォークのリーダーに頼まれてクリフを迎えに来たんだ。
一緒に来てくれないか?」

「クウォークっていうと…あの反連邦組織のか?
そのリーダーってのが俺に何の用があるっていうんだ?」

「それは…僕の口からは言えない…。」

「理由も知らされないのにほいほいついて行けるわけねぇだろ?」

「それは僕もそう思う…。でも…!危害は絶対に加えないと誓う。
もし、クリフに危害を加えそうな奴がいたら僕も一緒に闘うから…
お願いだ。一緒に来てくれないか?」

話は終わりだ、と背を向けるクリフを引き止めながら必死に請う。
任務というのもあるが、それだけではなくこの男ともっと一緒に
いたいという自分の想いが大きかった。
何故、そんな想いをこの男に持つのかフェイト自身も分からない。
分かるのは今、ここでクリフと別れてしまえば後で後悔するであろう
ということである。

「理由は話せるときがきたら必ず言うと誓う。だから…!」

すがるようなに見上げてくる瞳をじっと探るように見ていたクリフだったが、
やがて身体から力を抜きフェイトの方へと向き直る。

「分かったよ。お前についていってもいいぜ。」

そんな必死な瞳で見られちゃあ、まるでオレが子供苛めてるみてぇだぜ。
と呟くクリフの顔には苦笑という文字で表せるだろう笑みがこぼれている。

「ただし…不審なことがあったらお前について行くのはナシ…うわ!」

「本当に!本当に来てくれるのか!」

自分の言葉を遮るように自分の腕にすがり付いてくる
フェイトに驚きの声を上げる。
何するんだ!と抗議しようとはしてみたが、自分を見上げてくる
嬉しそうな笑顔に断念せざるを得なかった。
なかなか可愛いじゃねぇか。
男に対してこんな風に思ったこと初めてである。

「まぁ、オレ1人じゃあここから出る手段は残されてないみたいだし…
わけの分からねぇ連中よりは美人に着いて行く方が良いしな。」

「び、美人って…僕は女じゃなくて男だぞ。」

「そんなものは見りゃ分かるぜ。えーと、名前聞いてなかったな。」

「フェイト。フェイト・ラインゴットだ。男には美人なんて言わないだろ、普通。」

少し顔を紅くしながら不満そうに自分の考えを主張してくるフェイトの
様子がまたしても可愛らしく感じ、ちょっとだけ悪戯心が芽生える。

「男でも女でも美人は美人だ。オレがそう思えばな。
なんにしろ、これから宜しく頼むぜ。フェイト。」

―― !!

ぐいっと引き寄せられたかと思うと、フェイトの唇に温かい感触が当たる。
いきなりのことで何が起こったのか理解するのに時間がかかる。
そのままクリフの舌に唇を舐められ、
自分が今何をされているかが分かった。

クリフに抱きしめられキスされている!?

「何するんだよ!」

慌てて引き剥がし、さっきまでクリフが触れていたところの手を当てる。
キスされた恥ずかしさからかなんなのか、じんじんと熱く感じる。

「何って挨拶のキスだ。クラウストロではこうなんだ。」

知らないのか?と、しらっと言ってくるが、
フェイトが知る限りそんなことは一度も聞いたことがない。

「嘘だ!そんなこと一度も聞いたことないぞ!」

「そうか?んじゃ、オレ流ということで。」

「何だよ!それ!」

「さてと、ここの用事も終わったし…行くか。」

フェイトとの会話をしながら、ここの遺跡の中で捕まっていたらしい
子供を抱き上げ、さっさと部屋を出て行こうとする。

「待てよ!」

「ほら、行かなくて良いのか?急いでるんだろ。」

からかうようなクリフの言葉に、
フェイトは自分の置かれている状況を思い出す。
まだまださっきのキスの理由に納得はしていないが、
クリフの言う通り、ここでのんびりしているわけにはいかない。
とはいえ、素直にクリフの後に付いて行くのも悔しい感じがして、
前を歩いている男の前に走り出る。

「行けばいいんだろ!ちゃんと逃げずについてこいよ!」

そして、そのまま早歩きでクリフを先導するように歩いていく。
ときどき、振り向いて付いてきているのを確かめながら。
そんな様子もクリフにとっては可愛らしいだけで…
さっきまで変な奴らと戦っていたときの最低な気分から
何か起こりそうなワクワクするような気分になっている。

(何があるのか分からねぇけど、面白そうじゃねぇか。)

フェイトの後に付いていきながら、そう心の中で呟くのであった。





ちょっとだけ思いついたクリフとフェイトの立場が逆のお話です。
今、ソフトや攻略本などの資料が手元にないので覚えている限りで
書いてみました。
しかし、手早いですね、クリフさん。
格好良いクリフを書きたいのに、何故か書き始めるとこんな感じに
なってしまいます。何故だろう…?
ちなみにこの話の続きは考えてません。
思いついたら書いていきたい気もします。


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