←BACK  ←HOME



:: 暗闇 ::



ようやく鍵となるセフィラを入手し、フェイトたちは創造主の下へと急いでいた。
ブレアの話ではこの遺跡に創造主がいる空間への入り口があるという。

一度来たことがあるせいか以前来たときよりも
スムーズにモーゼルの古代遺跡へと辿り付いた。
まぁ、いろいろなモンスターに阻まれはしたが…。





謁見の間で立ちはだかるゴーレムをようやく倒すと
大きな音と共に地下への入り口が姿を現した。
おそらくこの入り口が創造主がいる部屋に通じているのだろう。


「あれ、階段が2つあるみたいだ…どっちが入り口なんだろう?
…何か感じないかな、ソフィア?」

「分からない…どちらも似たような感じで…。」


ごめんね、自分を見上げながらと謝るソフィアに
気にするなというふうに首を横に振る。
ソフィアの能力でも分からないとすると、
どちらも創造主への入り口ではないのか…それとも…?


「今まであれだけの罠を仕掛けてきてたからね。
今回も何か仕掛けてるかもしれない。
一応、どちらも調べてみる必要はあるんじゃないかい?」


人一倍用心深いネルらしい言葉にフェイトも同意する。
行ってみようというフェイトの言葉を聞くととともに、
メンバーたちは片方の階段を降り始めた。





辺りは灯りを作り出すものがないためかとても暗く、
一歩一歩慎重に歩みを進めていくしかないようであった。
とりあえず何か照らすものはないかと、以前手に入れた
ライトストーンを試しに使ってみたが全く役には立たなかった。


こんなに暗いとはいえ、モンスターたちにはお構いなしのようで…
次々とフェイトたちへと襲い掛かってくる。
今までの経験で戦闘技術に磨きがかかってはいるものの、
メンバー達はこの暗闇に苦戦を強いられる。
ある者は凍らされ、ある者は素早い体当たりにかなりのダメージをくらってしまう。
サメのような姿をしたモンスターの鋭い攻撃をさけようとフェイトが
横に移動しようとしたとき、岩のくぼみに足をとられバランスを崩してしまった。


――― やばい!!


モンスターに受けるダメージよりは痛くないとはいえ、かなりの衝撃があるだろう。
とっさに頭だけでも…と腕を上にあげ、次にくるであろう衝撃を待つ。


「なーにやってんだ。」


からかうような声とともにいつのまにか近くに来ていた
クリフに地面に叩きつけられる寸前の身体を救い上げられた。
その力強い助けに安堵のため息がもれる。


「油断してるんじゃねぇよ。まだまだ来るぜ!」

「分かってる!」


ほっとしている暇はない。
クリフに礼を言った後、続々と襲ってくるモンスターたちを倒す為、
再び闘いの場へと身を躍らせる。





ようやくモンスターたちを倒し、再び暗闇の中を歩き出す。
メンバーたちと共に歩き始めようとしたフェイトの手を誰かが引いた。
大きくて温かい…自分が良く知る感触にその手の正体に気づく。


(クリフ…)


どんな辛い時も側にいて支えてきてくれたクリフの手に
ほんわりと心が温かくなる。
この手に守られることに疑問を感じ反発したこともあったが、
今ではこの手に抱き締められることが何より嬉しい。
そうクリフに言って喜ばせるのもなんだか悔しいので、
口に出して言った事はないのだが…。

ただ、2人きりでいるときならばこのままでも嬉しいのだが、
今は皆の目が気になってしょうがない。
普段から仲が良いとはいえ、男2人で手を繋いでいるのは不思議に思われるだろう。

本心ではもうちょっと繋いでおきたいと思いながらも、
包まれた手を離そうと試みる。
しばらくの間ぐいぐいと自分の手を引っ張って頑張ってみたものの、
しっかりと握られた手はなかなか離れてくれない。
しょうがないので繋がれた手を目線の高さまで上げ、クリフに抗議する。


「なんだよ。この手。」

「何だ…って、繋いでるだけじゃねぇか。こうすりゃまたこけることもねぇだろ。」

「大丈夫だ。さっきはちょっと油断しただけで…。それに恥ずかしいだろ。」

「他の奴らには見えねぇよ。こんなに暗いんだしな。」

「じゃあ、クリフだって見えないんじゃないのか?」

「オレか?オレだったら見えてるぞ。とはいっても、くっきりはっきりとはみえねぇが。
まぁ、つまづいたりぶつかったりはしねぇくらいかな。」


クリフのその言葉がさっきこけそうになった自分を
からかっていることに気づき、むっとしてしまう。


「…もうこけたりはしないさ。」


そう言って強引に手を振り解き、真っ暗で見えにくい道を歩き出す。
そんな様子にやれやれといった表情をしたクリフだったが、
口元に笑みを浮かべながらフェイトの後ろを歩きはじめた。




しばらくすると、遅れてしまって見えなかった皆の姿がうっすらと
フェイトの目にうつる。
それにほっとし、追いつこうと足を速めたときであった。





「…クリフ!」

「どうした?何かあったか?」

「どうしたもこうしたもないだろ!手」

「手は繋いでねぇだろ。」

「繋いでないけど、なんで腰に手をあてる必要があるんだよ!」


そう、さっき振りほどいたはずのクリフの手が、
自分をエスコートするかのように腰に添えられていた。
確かに手を繋ぐなとだけ言ったが、他の人に見られたら
恥ずかしいのはこちらの方が上であろう。
慌ててクリフの手から逃げようと身体を動かすが、


「大丈夫だって。後ろには誰もいねぇしな。」


フェイトの慌てぶりにも動じず、腰にあてている手の力を強める。
さらに、「ほら、こんなことしても見てる奴なんていねぇよ」
と腰に当てていた手を下にずらしフェイトのお尻を撫でてくる。


「こ、こら!やめろって!!」


微妙に動く手の感触に思わず大きな声を出してしまった
フェイトを自分の方へと向かせ、声を封じるように唇を塞ぐ。
キスという形で。


「…んん!…」


何度か角度を変え合わせられる唇と唇。
その度に小さなため息のような声がフェイトからこぼれる。
この旅で幾度となく重ねあい、覚えてしまったその感触に
自然と閉じていた唇を開く。
それを待っていたかのようにクリフの舌がするりと隙間から滑り込み、
口内を甘く激しく蹂躙し、快楽を紡ぎだす。

キスから逃れようと暴れていた腕からも足からも力が抜け、
すがりつくだけで精一杯なフェイトを抱え上げ、さらに深いキスを与える。
最後に軽く唇を噛まれ、名残惜しむようにゆっくりと唇が離された。


「…あんまり大きい声だと聞こえちまうだろうが。」


唇同士がかすかに触れ合う距離で低く囁かれる声に
フェイトは身を震わせる。

しばらくの間、頬や額にキスを受けながらクリフの腕の中で
大人しくしていたフェイトだったが、自分たち置かれている状況を思い出し、
その腕から逃れようと暴れだす。


「…おまえ、こんなところででなんてことするんだ…!」

「だから、暗くて見えてやしねぇよ。」

「そういう問題じゃないだろ!」

「やめ…んん…」


再び唇を塞がれ、さらに深いキスを与えられる。





「…あんたたち。早く来ないと置いてくよ。」


突然暗闇の向こうから聞こえてきた声にびくりとする。
どうやら途中からついてくる気配のない2人に気づいたネルが
探しに戻ってきたらしい。
呆れたような声音にさっきまでの行為を見られていたかも、
という気持ちが大きくなる。
穴があったら入りたいというのはこういうことだろうか…。
恥ずかしくてネルの方を直視出来ない。


「す、すいません!」


慌ててクリフの身体を引き剥がし、「行くよ」と言葉を残し
先に進んで行くネルの後を追いかけるフェイト。

その足元はやはりおぼつかない感じで見ていて手を貸したくなる。

(ま、これ以上手出したらネルだけじゃなく
他の奴にも怒られてしまいそうだからな。)


「しかし、あぶなっかしいぜ…大丈夫か?」


そう呟きながら、フェイトの背中を追うように
暗闇の中を歩き始めるのであった。








どうも上手くまとめることが出来ないで終わってしまいました…。
ものすごい久しぶりのSSがこんなんですみません!
次はもっと上手いこと終わらせれるよう頑張ります〜(>_<)


←BACK  ←HOME